文学部長挨拶
文学部の近況
文学部長 遠城 明雄
文学部同窓会会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか。コロナウィルスはある程度終息いたしましたが、大地震や豪雨災害などの頻発とそれをめぐる情報のあり方が、私たちの日常を揺るがしております。こうした社会の状況に対して、人文学の視点からどのような情報発信ができるか、が問われているように思います。
今年度から、文学部長として遠城、副研究院長として青木博史教授(国語学・国文学)、片岡 啓教授(インド哲学史)の三人の体制で、文学部を運営しております。引き続きご支援をよろしくお願い申し上げます。
二〇二四年は法文学部創立一〇〇周年の節目の年となりました。十一月十六日に椎木講堂で記念式典が開催されたほか、イーストゾーン二号館に菅本千尋氏(美学・美術史卒)と工学部建築学科の卒業生が共同制作された記念モニュメントが設置されました。この記念プロジェクトの実施に関しては、倉富史枝同窓会長をはじめ、多くの卒業生の皆様方のご協力を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。
さて、大学の財政状況は年々厳しさを増しており、学生の修学・研究環境を充実させることが難しくなっております。このため新たな取り組みとして、「人文学教育・研究のための支援基金」を設立いたしました。これは文学部にご寄付をお願いするもので、ホームページをご覧いただければ幸いです。厳しい経済状況ではありますが、皆様方のご協力をお願い申し上げる次第です。
人文科学研究院では、二〇二二年度から六年間に渡って、文部科学省大学教育再生戦略推進費「デジタルと掛けるダブルメジャー大学院教育構築事業 ~Xプログラム~」の助成を受けております。これは、大学院人文科学府と統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻が連係して、新たに「人文情報学(デジタルヒューマニティーズ)」の修士課程を設置するもので、二〇二四年九月末に文部科学省から二〇二五年度の「人文情報連係学府」の設置認可を受けました。人文情報学に関しては、全国規模で関係機関のネットワーク作りが進められており、共同研究の取り組みも増加しております。今後、人文学とデータサイエンスを含む情報管理学の教育・研究を融合させることで、高度人文情報人材を養成すると同時に、これまでの人文学の知の蓄積を未来につないでいく使命を果たす一端になれば、と考えております(https://dh.kyushu-u.ac.jp/)。
例年に則って、二〇二四年の文学部および人文科学府の近況をご報告いたします。
二〇二四年三月に百四十一名の学士課程卒業者と二十九名の大学院修士課程修了者を送り出しました。久しぶりに生協で祝賀会を開催できたことで、かつての卒業・修了式に戻った感じがいたします。四月には、百六十一名の学士課程入学者と、四十五名の大学院修士課程入学者、十五名の博士課程進学・入学者を迎えました。また九月には、三名の学士課程卒業者、四名の修士課程修了者を送り出し、十月に修士課程と博士課程に各一名の入学者を迎えました。
入試では、八月末に実施予定だった大学院入学試験が、迷走した台風の影響で日程変更を余儀なくされるという出来事がありました。おそらく初めてのことではないかと思いますが、教職員の機敏な対応で無事終了することができました。「総合選抜Ⅱ型」入試の文学部国際コースは、応募者が二十八名で昨年度に引き続きコロナ禍前に戻りました。また記録的な円安という経済状況ではありますが、海外留学も以前の水準に戻りつつあります。
なお、二〇二六年度から「学校推薦型選抜」の導入を予定しています。多様な背景を持つ学生を確保することで、文学部に新たな風を吹かせ、大学院進学者の増加にもつなげていくことができれば、と願っています。
二〇二三年度の学府長賞には、大賞に辻 大地氏(イスラム文明史学)とDaniel Cory Gallagher 氏(言語学)の二名が、優秀賞には佐野由枝氏(中国哲学史)、松山哲希氏(朝鮮史学)、山本天斗氏(英語学・英文学)の三名が選ばれました。
人文科学研究院の事業として、九州大学出版会から出版している人文学叢書について、二〇二四年度は学府長賞大賞受賞論文である辻 大地氏の『前近代アラブ・イスラーム社会における〈同性愛〉概念の誕生』と小黒康正教授(独文学)の『ドイツと日本の「第三帝国」―「第三帝国」以前のネオ・ヨアキム主義』が刊行されました。
教員の異動について、二〇二四年三月をもちまして、宮本一夫教授(考古学)が定年で退職なさいました。一方、採用・昇任については、二〇二四年四月一日付で足立 孝教授(西洋史学)、田口武史准教授(独文学)、中村嘉雄教授(基幹教育院:英語学・英文学)、五月一日付で内田敦士講師(日本史学)が着任され、二〇二四年四月一日付で辻田淳一郎准教授(考古学)、高野泰志准教授(英語学・英文学)、下地理則准教授(言語学・応用言語学)が教授に、また井口千雪講師(中国文学)が准教授に、二〇二五年一月一日付でEllen VAN GOETHEM准教授(広人文学)が教授に昇任されました。助教に関しては、二〇二四年四月一日付で前田佳那氏、顧 明源氏、宮岡 大氏と、Xプログラム関係の特定プロジェクト教員として土持貴士氏、高城隆一氏、武 梦茹氏が着任されました。また同年一〇月一日付で外国人教師のCarrie Allyn Ankerstein 准教授(英語学・英文学)に特別プロジェクト教員としてご着任いただいています。
名誉教授のご逝去について、二〇二四年六月二八日に大村敏輔先生(心理学)が、同年一一月一一日に小野菊雄先生(地理学)が、逝去されました。文学部の発展に尽力してくださった先生方のご冥福をお祈り申し上げます。
二〇〇九年度に始まった朝日カルチャーセンター福岡との連携講座は、本年度も無事実施の運びとなり、文学コースによる「言語・文学における境界線」と人間科学コースによる「人間科学で読み解く現代社会―知と文化の交差点」を開講しました。また言語運用総合研究センターでも例年通り、国語教育セミナー・日本語教育セミナー・言語聴覚療法セミナーを行なっております。
末尾ながら、会員の皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。今後とも同窓生の皆様のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
(おんじょう あきお 一九八九年修了 地理学)
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