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文学部 人文学科 文学コース 国語学・国文学 専門分野 専門分野科目 (単位数 2) 選択科目 対象学年: 対象学部等: |
Japanese Linguistics (Lecture III)
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科目ナンバリングコード: LET-HUM3510J 講義コード: 2026 前期 毎週 木曜2限 伊都イーストゾーン A-118 教室 M/J科目 (日本語, 古典日本語) |
| 授業の概要 |
古事記・日本書紀・萬葉集を主たる資料としてきた上代語研究は、二〇〇〇年前後に木簡や正倉院文書といった一次資料が研究に多く導入されたことで、これまでの記紀萬葉が上代の言語運用全体の中でいかに局所的・局限的なものであったかという反省に直面することになった。資料の偏在という原理的制約を抱えつつも、可能な限り資料の"背後"を見据えた仮説を提起し、上代の人々の言語生活を総体的に把握する視座が求められている。「言語生活」とは、ソシュールの言語観に異を唱えた時枝誠記によって浸透した用語であり、西尾実など国語教育との関係の中でも一時期活発に用いられたが、この用語が近時の上代語研究において新たな意味や装いをもって立ち現れてきている。以上の立場に基づき、上代語研究を言語生活論という観点で語り直してみるのが本講義の趣旨である。 講義のレベルは高度であり、一定の難しさを維持する。専門的な用語や知識を必要とする皮相な難解さではなく、粘り強く自分自身の常識を疑い、時間と実存をかけて悩まねばならない難しさを追求する。講義は、様々な発展的逸脱および創造的連想によって語りが愉快に錯綜・拡散する(これを伝統的な国文学では「雑談(ざうたん)」という。佐竹昭広『古語雑談』岩波新書を見よ)ことから、決して本筋通りには進まない可能性があること、そのために学問的な展開可能性(いまだ可能的潜在性にとどまる。未熟とは成熟可能性の言い換えに他なるまい)に満ち満ちていることを了承されたい。 第1講 導入 春休み中に考えたこと 第2講 基礎論(1)萬葉集と帝国主義 第3講 基礎論(2)古事記・日本書紀の方法 第4講 基礎論(3)上代特殊仮名遣と資料的性格 第5講 言語生活論序説 人麻呂歌集と日本語表記史 第6講 言語生活各論(1) 文字と絵 第7講 特別回 九州大学国語学・国文学研究室100周年企画 春日政治と高木市之助 第8講 言語生活各論(2) 歌を書くということ 第9講 言語生活各論(3) 言語生活と文体・表記体 第10講 言語生活各論(4) コトタマ(言霊)の基本構造 第11講 言語生活各論(5) 上代における発話・発言 第12講〜言語生活論総括 「言語生活」とは何だったのか—ソシュール・時枝・西尾 ソシュール言語学は、古い訳語でいえば言語(langue)と言(parole)を区別した上で、言語研究の中心的対象をlangueに限定し、また方法論的な先後として共時論を通時論に優先させる立場をとった。研究の対象や方法を限定することで自律的な学問領域を確立しようという試みは、言語研究に限らず様々な場面でみられることではあるけれど、私たちのように文献を読み解く場合にはlangueの探究のみでは飽き足らないとともに、言語研究の内部からも、語用論や社会言語学といったソシュール言語学の外側の研究が興隆してきている。そして何より人間の営みは、私たちが都合良く設定した「学問領域」などを超えた様々な要素が錯綜しており、それに正面から向き合うことこそが人文系学問の魅力であるのだから、研究対象を狭く限定して鋭く追究しようという態度は、端的にいって(私には)全然面白くないのである。たとえば上代の古語を解明することは、言葉の究明を通じて当時の人々のものの見方や生活のありようを復原することと同義であり、そうした人間生活への省察を欠いた言語研究は、一面的なものにならざるを得ない。「かく」「よむ」などの基礎語彙であれば尚更であるし、助動詞や叙法副詞等の文法語彙が人々の世界把握を規定することもあろう。言語生活史という主題は、このような問題意識に支えられている。 講義の全体を通じて、規範の生成と規範からの逸脱ということが重要な観点となる。規範が収斂をよばず、新たな拡散への契機となるといってもよい。文字生活上、漢字を用いて日本語を書記しはじめたとき、そこには書き様の定まった規則などなかったはずである(つまり表記体は歴史的産物である)。このとき、個々の用字法の集積しかない段階から文章全体の書き様を統べる規範が生成されてゆく、その仕組みが問題となると同時に、規範が生成されることで初めて、典型からの逸脱すなわち個性化が可能になる。逸脱はスポーツであれば反則で終わるけれども、創造的な芸術文化の場合は表現領域の広がりを意味する。ファッションを例にとれば、変わり映えのしない「よくある着こなし」から絶妙にズラすところにオシャレやセンスというものがある(とはいえ資本主義社会においては、画一的な既製品の服を組み合わせてそれをするしかないところに矛盾があるとは言えるのだが)。さらに「プラダを着た悪魔2」の場合は、富裕層でありながらそもそもファッションに興味をもたない、という形のズラし方も出てくる。服の着こなしに気を遣うことそのものを従来的な規範と捉え、あえてファッションに対して冷笑的な目を向けることそのものに新たなセンスを見出そうとするのである。これに似た構造は古代の文字生活・言語生活の中にいくらでも発見できる。受講および試験にあたっては、このような抽象的な構造モデルを常に念頭において考えを深めることが望ましい。 (This course focuses on the Japanese language of the Nara period. (Students should be able to understand ancient Japanese with little or no translation.)) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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キーワード : 奈良時代語(上代語)、記紀萬葉、木簡、言語生活 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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履修条件 : 履修に必要な知識・能力 : 高等学校レベルの古典日本語の知識があること。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 特記事項 |
教職 : 教職(国語) 資格 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 到達目標 |
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府人文基礎専攻・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府歴史空間論専攻・カリキュラムマップ(2025年度版) 九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府言語・文学専攻・カリキュラムマップ(2025年度版) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 授業方法 |
テキスト : 毎回、資料を配布する。 参考書 : 言語生活史の基本論文として、講義と並行して以下のものを読んでおくこと。 池上禎造1955「萬葉人の言語生活」『萬葉集大成6 言語篇』平凡社 橋本四郎1972「古代の言語生活」『講座国語史6 文体史・言語生活史』大修館書店 乾善彦2017「「文字と絵」研究序説」関西大学『国文学』101 授業資料 : 授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
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| 成績評価 |
GPA評価
成績評価基準に関わる補足事項 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 学習相談 |
学習相談 : メールで相談に応ずる。 授業以外での学習に当たって : 合理的配慮について : できる限りのことをしますので、小さなことでも遠慮なく相談してください。 障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。 <相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階) (電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||