文学部 人文学科 哲学コース
インド哲学史 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年: 2年生 3年生 4年生
対象学部等:
インド哲学史講義 III
History of Indian Philosophy (Lecture III)
講義題目  インド哲学研究
教授 片岡 啓
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2026 前期
毎週 木曜2限
伊都イーストゾーン D-107 教室
M/J科目 (日本語, サンスクリット)
更新情報 : 2026/3/6 (09:10)
授業の概要 春夏15回のセメスター講義である。

Qu'est-ce que la philosophie indienne ?
Vincent Eltschinger, Isabelle Ratie
Gallimard, 2023


フランスから出た最新のインド哲学の本『インド哲学とは何か?』を読み進める。こちらで日本語訳を用意するので、それで読み進める。フランス語を直接に読む必要はないのでご安心を。片岡が用意した和訳をみながら内容を検討していく形式である。学生側が聞く講義形式ではあるが,恐らく,内容的に慣れない専門用語が多いはずである.ついていくには予習・復習も必要になるだろう.概観的に手早く見ていく、というわけにはいかないので、進度は遅くなるはずである。つまり、通常の講義のように要領よく俯瞰する授業ではない。インド哲学史における実際の議論の内容について知りたいという人には向いている授業である。本書の目次の和訳は以下である。

目次
•サンスクリット語の発音に関する注記
•序文
•序論
oインドに哲学は存在するのか?
oダルシャナ(学派)、「正統派」と「異端派」
oヨガについて
oインドにおける哲学の起源について
o理性と、理性に対する諸態度
oインド哲学のいくつかの特異性
________________________________________
第一部:哲学的な諸問題
第I章:自己(セルフ/我)
•自己に関する思索のウパニシャッド的な始まり
•自己の存在を支持する側による、極めて多様な定義
•根本的な解脱論的対立:自己は解脱の条件か、それとも束縛の根源か?
•無我の教義と業(カルマ)の報いをどう両立させるか?:仏教における「相続(シリーズ)」の概念
•自己に対する「初期」仏教の態度:常住論と断滅論の間
•仏教における個人:五蘊(ごうん)と縁起
•変装した仏教的実体論?:補特伽羅(ふとがら/プドガラ)の教義
•自己の存在証明?:意識、記憶、および認識の総合
•「私は〜である」と言う能力は、自己の表現か、それとも構築か?
•自己意識と「自己(我)」の意識:意識の自照性(反省性)に関する論争
•クマーリラにおける自己の再認識
•シャーリカナータにおける自照的意識と自己の意識
•意識の自照性と「シャンカラ的コギト」
•持続する自己意識?:ウトパラデーヴァにおける記憶の論証
•自己はいかにして疎外(縛)され得るのか?
•非二元論的な回答:アドヴァイタ・ヴェーダーンタの「説明不可能な錯覚」、シヴァ派の「動的な自己」
第II章:意識の外側に世界はあるか?
•世親(ヴァスバンドゥ)と、不可能な外部対象
•陳那(ディグナーガ):知覚の外部的「基盤」の不可能性と、アスペクト(形相)の概念による内部主義的説明
•ニヤーヤ学派とミーマーンサー学派による外部主義的反応:批判
•意識のアスペクト説と夢の比喩に対する批判
•ダルマキールティ的観念論の解釈における障害と論争
•仏教の唯識派(ヴィジュニャーナヴァーディン)と経量部(サウトラーンティカ)の間の論争
•対象とその認識が共に捉えられる必要性という、ダルマキールティの原則
•ダルマキールティ以後の仏教観念論
•アドヴァイタ・ヴェーダーンタにおける観念論と夢の比喩
•非二元論シヴァ派の観念論:不可能な外部対象と意識の創造的自由
•想像力の創造性に関する論争
•知覚における自由?:意識の顕現(プラカーシャ)と意識の把握(ヴィマルシャ)の区別
•観念論者としていかに生きるか?:芸術作品としての世界と絵画の比喩
第III章:他者
•仏教観念論における他者性への最初のアプローチ:世親による間主観性
•独我論の告発に対するダルマキールティの反論:『他相続の成立(サンターナーンタラ・シッディ)』
•他者の存在の意識は、必然的に推論による知識なのか?
•ダルマキールティの戦略:他者の存在を証明するか、それとも我々の存在への信念を説明するか?
•ダルマキールティ的推論への攻撃(1):観念論と矛盾する企て
•ダルマキールティ的推論への攻撃(2):観念論体系における一人称から三人称への移行の不可能性
•後期仏教観念論における他者の存在の否定
•非二元論シヴァ派における他者の認識:知覚でも推論でもない、自由の曖昧な直観
•仏教徒とシヴァ派による慈悲と利他主義
第IV章:知識、誤謬、真理
•概念性と非概念性
•誤謬と錯覚
•妥当性、真理性、エピステミック(認識的)性格
•超感官的なものの知覚
•推論と論理学
第V章:聖典の権威、合理性、宗教
•古ニヤーヤ学派
•バルトリハリ
•ミーマーンサー学派:クマーリラ・バッタ
•ダルマキールティ
•後ニヤーヤ学派
•プラティヤビジュニャー(認識派)
第VI章:言語
•能記(シニフィアン)と所記(シニフィエ)の関係
•音声から意味へ
•文章とその意味
•比喩的意味
•詩学と暗示
第VII章:普遍(ユニバーサル)
•文法学、古ミーマーンサー、古ニヤーヤ
•ヴァイシェーシカ学派
•クマーリラ
•バルトリハリ
•仏教、反実在論、唯名論
•類似としての普遍
第VIII章:神
•ヒンドゥーの主宰神(イーシュヴァラ)とは誰か? そしてその擁護者は誰か?
•この論争における「無神論的」な敵対者は誰か?
•権能と知識の頂点の必要性という論証
•設計(配置)からの論証
•非意識的なものが行動を開始することの不能性という論証
•慣用法(使用)からの論証
•神の動機、あるいは遊戯の性質と「山羊の糞の目的」をめぐる論争
•非二元論における主宰神:アドヴァイタ・ヴェーダーンタの予備的な虚構から、非二元論シヴァ派の根源的な全能まで
•個人の責任の問題
•神の存在を証明するか、それとも経験するか?:証明、信仰、認識
第IX章:時間
•時間に関する思索の始まり:叙事詩の「時間説」
•ヴァイシェーシカの実体としての時間と、サーンキヤにおける行為への時間の還元
•分割不可能な実体としての時間か、原子論的な時間か?:ジャイナ教における問い
•サーンキヤ、アドヴァイタ・ヴェーダーンタ、仏教における実体としての時間への批判
•仏教の刹那滅(瞬間性)の教義
•実体としての時間に対する非仏教的な代替案:能力としての時間
第X章:空間
•虚空(アーカーシャ)としての空間、容器としての空間、および方向(ディシュ)の条件としての空間
•ディシュ(方向)とアーカーシャ(虚空)への批判
•インド哲学における空間:充実と空虚の二分法?
________________________________________
第二部:諸学派:歴史的および教義的概観
•仏教
•サーンキヤ学派
•ヴァイシェーシカ学派
•論争、弁証法的伝統、およびニヤーヤ学派
•瑜伽行派/唯識派仏教
•古ヴェーダーンタ学派
•ミーマーンサー学派
•唯物論
•論理学・認識論的伝統の仏教
•ジャイナ教
•古典ヴェーダーンタ学派
•シヴァ派の哲学的潮流:シャイヴァ・シッダーンタとプラティヤビジュニャー
•新ニヤーヤ学派(ナヴィヤ・ニヤーヤ)
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•結論に代えて:向こう岸から
•付録
o参考文献
o注釈
o引用されたインド哲学者の一覧(年代記的指標付き)


インド哲学について、最新の研究成果を知りたい、という人の期待に応える授業である.日本語ではこの手の内容を知ることができる便利な本は未だ存在しないので、フランス語から片岡(Claude使用)が和訳したものを読む、というのが本講義の趣旨である。内容的には日本語世界には流布していない最新の情報ばかりである。資料については、こちらで用意するので購入の必要はないが、安価なので、フランス語の原書を買いたい人は手元に備えておくと今後も活用できるのでお薦めである。ただし、Amazon.comでは切れているので、版元のサイトから直接に買うことになる。

https://www.gallimardnumerique.com/ebook/9782072711756-qu-est-ce-que-la-philosophie-indienne-vincent-eltschinger-isabelle-ratie/

また、今回読まない他の章にも、重要な情報が詰まっている。言うまでもないが、サンスクリット語が背景にあるので、それについては対応する日本語(あるいは漢訳)が既に存在している場合もある。つまり、サンスクリット語→仏語→日本語という作業のみならず、サンスクリット語→日本語(漢訳)という場合もあるので、それについても解説することになる。毎回最後10分ほどを取って,感想・質問などの提出を課す.毎回の提出物は必須である.白紙回答は欠席とみなす.4回以上の欠席は不可とする.毎回の提出物のみで成績を判断する.目次に見られるようなインド哲学の哲学議論の内容そのものに興味がある人におすすめの授業である。いわゆる通常の「インド哲学史概説」とは少し趣きが異なる内容である。ダイレクトにインドの論争に飛び込んでいくタイプの書籍である。資料提供にあたっても、分析にあたっても、AIとくにClaudeを多用する予定である。学生の側でもAIで分析したいひとがいれば、適宜、一次資料、二次資料の提供を行う。インド哲学研究にAIをどう使っていくか、ということもサブテーマである。

(This course reads the recent French book Qu'est-ce que la philosophie indienne ? by Vincent Eltschinger and Isabelle Ratié. Students will use a Japanese translation prepared by the instructor, so knowledge of French is not required.

The class explores major debates in Indian philosophy—such as the self, consciousness, knowledge, language, and God—through close reading and discussion. The pace will be slow because the course focuses on the actual philosophical arguments rather than a general historical overview.

Students will submit a short written response at the end of each class, and the course will also consider how AI tools can be used in the study of Indian philosophy and Sanskrit sources.)
キーワード : インド哲学
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 : サンスクリット語の知識を前提とはしない.
特記事項 本科目は宗教文化士受験認定科目です(http://www.cerc.jp/)
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(社会)(公民)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
U_B-1 [人文学の広範な知識と理解]
人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法を説明できる。
文献中に出てくる概念を正確に理解しており,それを自身の言葉で説明できる. 文献中に出てくる概念を十分に理解している. 文献中に出てくる概念が文脈に即して理解できる. 一個一個の概念について,更なる理解が必要.
U_B-2 [専門分野の知識と理解]
それぞれの専門分野の諸領域のそれぞれの基礎知識、その領域に固有の問題設定や研究手法を身につけ、それらを説明できる。
作者の主張を正確に理解し,それを自身の言葉で説明できる. 作者の主張を十分に理解している. 作者の意図を文脈に即して理解している. 作者の意図を理解していない.
U_B-3a [哲学コース固有の課題]
過去の思想やその表現に対する批判的考察を通じて、人間存在を深く理解し、それを説明できる。
文献の成立背景を踏まえて,古典の論理を正確に理解し,また,それを自身の言葉で説明できる. 古典の論理を正確に理解している. 論理を文脈に即して理解できている. 論理展開を十分に理解していない.
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ(2025年度版)   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ(2025年度版)
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ(2025年度版)   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ(2025年度版)
九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻・カリキュラムマップ(2025年度版)
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府歴史空間論専攻・カリキュラムマップ(2025年度版)
九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻・カリキュラムマップ(2025年度版)
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義 こちらで用意した資料を共に読み進めながら、適宜、片岡が解説する。
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : moodleで配布する
参考書 :
授業資料 : 必要となる資料については各回毎に片岡が用意した資料を配付する.

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 Introduction
2 I.1
3 I.2
4 I.3
5 I.4
6 II.1
7 II.2
8 II.3
9 II.4
10 III.1
11 III.2
12 III.3
13 III.4
14 まとめ
15 まとめ

成績評価
観点→
成績評価方法
U_B-1
[人文学の広範な知識と理解]
U_B-2
[専門分野の知識と理解]
U_B-3a
[哲学コース固有の課題]
備考(欠格条件、割合等)
授業への貢献度 ただし4回以上の欠席は無条件に不可とする。

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 : 対面オンリーの予定。毎回,授業終わりに,感想質問などの「課題」という名前のペーパーを提出してもらう.これが無い場合は欠席と勘定する.白紙提出も欠席と同様と看做す。授業に沿った学習内容の確認を主眼とするものである。
学習相談 学習相談 : kkataoka[at]lit.kyushu-u.ac.jpにメールのこと.

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)