中国文学研究室
四〇〇〇年分の叡智と感動をあなたの人生の羅針盤として
「文明」という言葉は、中国を起源とする漢語です。本来は、文字・文章によって人々を教化して国を治めることを言います。
では、「文学」という漢語は何を指すのでしょうか。――中国では黄河文明が発祥して以来、過去の重大な事件や優れた人の言葉を、文字・文章で書き遺し、同時代を生きる人々や後世の人々への教訓、戒めにして来ました。例えば、儒教の祖である孔子が編纂したとされる中国最古の書物『尚書』・『詩経』は、国家や政治のあり方、人間の行うべき道のあり方を示す道標として学ばれて来ました。文字・文章から学ぶこと、これが「文学」という漢語の意味する所なのです。
悠久の長い歳月をかけて、中国文学は、詩歌や散文、戯曲や小説など、さまざまなジャンルの作品を生みました。恋の悩み、仕事の悩みから、生きることの喜びまで、人生に対して先人達が思い巡らした洞察を、文字を辿りつつ共有し、学びを得るのも楽しいものです。
私たちの研究室では、中国の各時代のさまざま名作を原文で精読したり、作者の生い立ちや歴史背景を学びながら、作品に対する深い理解を得て行きます。時には教員と討論し、時には学生同士で語り合いながら、広い視野を身につけます。そして学生自身が作品と向き合う中で、自分なりの解釈を見つけることを目指しています。
本研究室では、中国文化に対する幅広い知識と中国語の能力を修得することができます。また、中国文学を学ぶことは、日本を飛び出て異文化を知ることでもあり、日本の文化のルーツを知ることでもあります。すでに80数年の歴史を有する本研究室の卒業生・修了生は、大学や高校の教員をはじめ、近年では世界規模で展開する企業に迎えられている人もいます。
教員
静永 健 (SHIZUNAGA Takeshi) 中国文学講座/教授
- 専門
中国古典文学 - 専門分野
漢魏六朝文学研究(『文選』『玉台新詠』など)、唐代文学研究(李白、杜甫、白居易など)、東アジアというグローバルな視点から捉え直した中国古典文学研究 - 主要業績
『唐詩推敲:唐詩研究のための四つの視点』(研文出版、2012年)
『漢籍伝来:白楽天の詩歌と日本』(勉誠出版、2010年)
『海がはぐくむ日本文化』(東京大学出版会、2014年、共著・主編)
『漢籍東漸及日蔵古文献論考稿』(中華書局、2011年、共著)
『目加田誠「北平日記」:1930年代北京の学術交流』(中国書店、2019年、共著・主編)
『目加田誠北平日記』(鳳凰出版社、2022年、共著・主編、上の書籍の漢語訳)
『白文課本『史記』項羽本紀:悩める若き英雄の物語』(花書院、2020年)
論文「華陽公主の面影:白居易をめぐる永貞期の青年群像」(『文学研究』116、2019年)
論文「唐詩の微韻」(『中国文学論集』50、2021年)
論文「明末の異人唐汝詢とその唐詩注釈」(『中国文学報』95、2022年)
井口 千雪 (INOKUCHI Chiyuki) 中国文学講座/講師
- 専門
中国中近世文学 - 専門分野
『三國志演義』を中心とした明代白話小説の成立過程(版本の校勘や歴史書との比較など)、及び受容の様相(書坊・知識人・大衆の関わり) - 主要業績
「武定侯郭勛による『三国志演義』『水滸伝』私刻の意図」(『日本中国学会報』71、2019年)
『三國志演義成立史の研究』(汲古書院、2016年)
「『三國志演義』三系統の版本の継承関係―劉龍田本を手がかりに―」(『東方學』127、2014年)
「関索説話に関する考察」(『和漢語文研究』11、2013年)
孫 琳浄(SUN Linjing)外国人教師/講師
- 専門
中国古典小説、漢文学、中国語学 - 専門分野
『水滸伝』と曲亭馬琴『南総里見八犬伝』を中心とした、中国古典小説の近世日本への伝播・影響に関する研究 - 主要業績
『日本近世における白話小説の受容 曲亭馬琴と『水滸伝』』(汲古書院、2021年)
「『南総里見八犬伝』における『水滸伝』の受容―犬坂毛野を中心に―」(『和漢語文研究』第17号、2019年11月)
「石渠閣補刻本『忠義水滸伝』の日本における受容の一側面―馬琴と北静廬を手がかりに―」(『中国文学報』第91冊、2018年10月)