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西洋史学研究室

時間の厚みを通してヨーロッパを探究する

過去について考えることは、無限の可能性を秘めた「知の冒険」です。異文化や他者についての考察は、自身の省察と変容へと導かれる実践的行為でもあるのです。

西洋史学研究室は、九州帝国大学法文学部の発足時に設置された数少ない講座の一つです。明治以降の日本では、西洋文明を「模倣すべき」対象としてきたからですが、その後、日本の「西洋史学」は、世界でもまれな独自な変容を遂げ続けました。現在では、異文化としての欧米文明の実証研究を、世界中の同僚たちとともに押し進めるとともに、歴史学の批判的な検討、社会の中での歴史学の意義(公共性)などの諸問題を、理論的、実践的に問う「知の前衛」にも位置しています。

「九大西洋史」は、伝統的に、最新の問題関心や方法論を共有しながら、欧米と同じレヴェルの実証研究に早期から取り組んできました。また、欧米に多くの留学生を送り出すとともに、海外の学界、研究者との交流を続けてきた特異な研究室です。現在でも、学内外の多様な研究者たちとともに、共同研究や比較史などの試みを実践しながら、学界や社会に独自な貢献を果たしています。

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教員

今井 宏昌 (IMAI Hiromasa) 西洋史学講座/准教授

  • 専門
    ドイツ現代史
  • 専門分野
    物理的・肉体的な暴力の経験が、時代状況とのかかわりの中でどのように変容し、また逆にその当事者や社会をどのように規定していったのかという問題関心から、第一次世界大戦後ドイツにおけるパラミリタリ(準軍隊)組織・義勇軍とそのメンバーのバイオグラフィを、経験史の観点から分析している。
    またこれと並行し、第一次世界大戦中に福岡県久留米市に設立されたドイツ兵俘虜収容所の世界を、「下からのグローバル・ヒストリー」の視角から再考している。
  • 主要業績
    1. 『暴力の経験史:第一次世界大戦後ドイツの義勇軍経験 1918~1923』(法律文化,2016年)
    2. 「ヴァイマル末期における「赤い伯爵」と労働者世界:『下からのドイツ』をめぐって」水野博子/川喜田敦子編『ドイツ国民の境界:近現代の時空から』(山川出版社,2023年)
    3. 「ドイツ義勇軍経験とナチズム運動:ヴァイマル中期における「独立ナチ党」の結成と解体をめぐって」鍋谷郁太郎編『第一次世界大戦と民間人:「武器を持たない兵士」の出現と戦後社会への影響』(錦正社,2022年)
    4. 「ドイツ革命期における「武装せる市民」:ハレ住民軍を事例に」『軍事史学』(特集 一九二〇年代再考)第56巻第4号(2021年)
    5. 「ヴァイマールと向き合う:戦後日本のドイツ研究における「教訓の共和国」」『ドイツ研究』(シンポジウム ヴァイマール100年:ドイツにおける民主主義の歴史的アクチュアリティ)第54号(2020年)

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足立 孝 (ADACHI Takashi) 西洋史学講座/教授

  • 専門
    スペイン中世史
  • 専門分野
    中世盛期イベリア半島を時間的・空間的枠組みとし、征服=入植運動、封建制、商業といった、それぞれ固有の研究の伝統をもつ社会経済史的な問題系を、定住史的かつ空間編成論的な方法を駆使して一挙に連結すると同時に、現地文書館で猟した文書史料の綿密な分析にもとづく実証研究にとりくむことによって、マクロ・ミクロ両面からイベリア半島はおろか中世地中海史、ひいては西欧中世史そのものの刷新を模索している。
  • 主要業績
    1. 『辺境の生成:征服=入植運動・封建制・商業』(名古屋大学出版会,2019年)
    2. 「14 世紀前半バレンシア=アラゴン王国境界における村落共同体と流通回路:ビリャエルモーサとプエルトミンガルボ①②」『史学研究』第310号(2021年),第311号(2022年)
    3. Une critique génétique du compte seigneurial: idéal et réalité de l’exploitation d’un domaine épiscopal de Huesca au XIIIe siècle, in Entre texte et histoire. Études d’histoire médiévale offertes au professeur Shoichi Sato (Paris, 2015)

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